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刑事事件

<保釈請求>犯罪類型毎の保釈の運用-放火-

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1 はじめに

現住建造物等放火(以下「現住放火」といいます。)罪は、法定刑が「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」であり、重罪とされています。
したがって、現住放火は、法89条1号に該当するため、権利保釈は認められません。
しかも、現実に建物内に居住している者を死に至らしめる危険性が極めて高く、また、延焼により不特定又は多数人の生命・身体・財産を危険にさらすおそれがあることから、基本的には、重く処罰される傾向にあります。

ところが、裁判員裁判の現住放火における量刑は、統計上、裁判官裁判に比べ、執行猶予率が増加傾向を示しています。
したがって、放火魔による連続放火事件は別として、裁量保釈が認められるケースもあると考えられます。

そこで、実務で問題となる事例に関し、裁量保釈が認められるか否かについて検討することとします。

2 他人宅に対する現住放火の場合

動機としては、憂さ晴らしのため、意趣晴らしのため、火を見ると快感を覚えるため、むしゃくしゃした気分を晴らすためなど、様々な場合があります。
そして、放火の方法も、灯油やガソリンを建物の壁などにまき散らし、あるいは、新聞紙、衣類、ごみ類、木片や小枝等を媒介物として用い、ライターやマッチ等で点火するというもので、住宅の密集する市街地では、時間帯、乾燥状況や風向きによっては、当該建物だけでなく、延焼の危険から、不特定多数の人の生命・身体・財産に危害が及びかねないのでありまして、極めて悪質性、重大性が高いといわざるを得ないのです。

このような社会に対して危険な事態をもたらす蓋然性が高い事案では、一般的に、当該犯罪の罪質・犯情からの身柄拘束の必要性と比較し、被告人の釈放を必要とするだけの特別の事情を見いだせないとして、裁量保釈は認められないと考えられています。

3 戸建ての自宅に対する現住放火の場合

動機としては、家族から疎外されて世をはかなんだため、あるいは、会社の人間関係に悩んだため、人生に悲観したためなど、様々な場合があります。

そして、比較的多いのが、そのような動機から、家人の留守を見計らい、カーテンに火を点けたり、時には、灯油やガソリンを部屋にまき散らして放火したりして、焼身自殺を図ろうとしたというものです。
しかも、炎を見て我に返り、自ら消火活動をするほか、隣家に助けを求めたり、110番や119番通報をする場合もあり、さらに、犯行後、自殺できなかったことから、自首する場合もあります。
そうしますと、被告人が事実関係を認め、犯行態様も客観的な証拠によって裏付けられていれば、罪証隠滅のおそれはないものといえます。
そして、家族の精神的な支えによって、動機面の問題が解決されれば、再犯のおそれは一般的にないものといえます。
したがって、家族が被告人の身柄を引き受け、公判への出頭確保と日常生活の監督が期待できれば、被害が自宅だけにとどまったのか、他へも延焼したかによっても違いますが、裁量保釈が認められるケースもあると考えられます。

4 マンションの部屋に対する放火の場合

被告人が家族と居住する部屋であれ、他人の居住する部屋であれ、マンションの一室に放火した場合、不燃性建造物の進化により、防火構造上、他の区画部分あるいは居住部分へは容易に延焼しにくい構造となっている場合はともかく、一般的には、耐火構造となっていても、火勢によって窓ガラスが割れ、そこから炎が噴き出して、階上・階下のベランダ、そして居住部分へ延焼するおそれがあるため、マンション全体を一個の建造物ととらえて、その現住性が肯定されています。
そうしますと、現実には、マンションの一室が焼損したにすぎない場合でも、マンション全体に対する現住放火として起訴されるわけです。
その一方、検察官は、実務的な処理として、当該部屋だけに対する放火として起訴する事例もあります。
裁量保釈が認められるか否かについては、他人の居住する部屋に対する現住放火の場合は、上記1と同様になると考えられ、また、家族と居住する部屋に対する現住放火の場合は、上記2と同様になると考えられます。

 

 
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