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刑事事件

<保釈請求>犯罪類型毎の保釈の運用-危険運転致死傷-

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1 はじめに

危険運転致死傷罪は、故意による危険運転行為(基本行為)から人の死傷結果が生じた場合に成立し、当該結果についての故意は不要な点で結果的加重犯と同様の構造を有していて、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転死傷処罰法」といいます。)2条及び3条に規定されています。

なお、危険運転致死傷罪は、従来、刑法208条の2に規定されていたのですが、自動車運転死傷処罰法の制定に伴い、同法律に独立して規定されることとなったのです。
危険運転致死傷罪の法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役ですので、危険運転致死の場合は法89条1号に該当するため、権利保釈は認められません。
自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪の内容を見ますと、刑法の危険運転致死傷罪を引き継いだ、⑴酩酊運転(自動車運転死傷処罰法2条1号)、⑵制御困難運転(同法2条2号)、⑶未熟運転(同法2条3号)、⑷妨害運転(同法2条4号)、⑸信号無視運転(同法2条5号)に加え、新たに、⑹通行禁止道路運転(同法2条6号)が設けられ、さらに、これらよりは刑が軽い、新たな危険運転致死傷罪が設けられました(同法3条1項2項)。

2 交通事件の特殊性

自動車の運転に伴う事故は、職業運転手だけでなく、通常の社会生活を送っている善良な大多数の市民も、わずかなミスで起こす可能性があります。
しかし、運転行為の中でも、特に危険性の高いものについては、罰則が事案の実態に即していなかったことから、法改正の必要性が強く叫ばれ、刑法の危険運転致死傷罪の新設、そして自動車運転処罰法の制定というように、運転の悪質性や危険性などの事案の実態に応じた処罰ができるように、罰則の整備が行われて、次第に厳罰化が図られるようになったのです。
ところで、交通事件は、結果が重大な事案でも、元々在宅起訴が多かったわけですから、罰則の強化が図られたからといって、保釈の運用に影響があるとは考えられません。
そして、交通事件では、実況見分調書やアルコール・薬物の検出や病気に関する書面が重要な客観的証拠になりますので、実効性のある罪証隠滅行為に及ぶ現実的可能性が高くなるのは、供述に依存する事案ということになります。

3 危険運転致傷事件

⑴ 被告人運転の自動車に同乗者がいる場合

起訴前の捜査により、被告人の行為がどの危険運転致傷罪に該当するかが確定され、その結果起訴されるわけですから、被告人が公訴事実を認めており、事故態様も客観的証拠によって裏付けられていれば、罪証隠滅のおそれはないものといえます。
したがって、権利保釈が認められます。
問題となるのは、被告人が公訴事実を争っていて、被害者と同乗者の証言が公訴事実の立証に欠かせない場合です。
まず、被害者との関係ですが、被告人と被害者の供述が対立しているからといって、交通事件という性質上、被告人が被害者に接触して、自己に有利な証言をするよう働きかけをする現実的な可能性があるとは考えられません。
しかし、同乗者については、実効性のある罪証隠滅行為の現実的可能性が高いわけですから、同乗者の証人尋問が終わるまで、権利保釈は認められません。
同乗者の証人尋問が終わり、今後の証拠調べが、被告人質問を残すのみであれば、権利保釈が認められると考えられます。

⑵ 中立的立場の目撃者がいる場合

被告人が公訴事実を争っているからといって、たまたま事故を目撃した第三者に接触して、自己に有利な証言をするよう働きかけをする現実的な可能性があるとは考えられません。
被害者との関係については、上記⑴のとおりです。
したがって、⑵については、権利保釈が認められると考えられます。

4 危険運転致死事件

⑴ 被告人運転の自動車に同乗者がいる場合

危険運転致死の場合は、上記のとおり権利保釈は認められません。
被害者は死亡しているわけですから、上記3の⑴中、危険運転致傷を危険運転致死に、権利保釈を裁量保釈にそれぞれ置き換えるほか、被害者との関係を除き、上記3の⑴と同様ということになります。

⑵ 中立的立場の目撃者がいる場合

上記3の⑵中、権利保釈を裁量保釈に置き換えるほか、被害者との関係を除き、上記3の⑵と同様ということになります。

 

 

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