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刑事 裁判

書証を不同意とした場合の裁判所の印象は?

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被告人が起訴状記載の公訴事実を認めているのに,弁護人が一部の証拠(書証)について不同意との意見を述べることがあります。

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不同意の意見については,一般的に不同意とする理由を述べる必要はないと解されています。
したがって,裁判所も特に釈明を求めないことも多いと思われます。

ただ,検察官の意図する要証事実から考えても,被告人に何ら不利益をもたらさず,むしろ訴訟経済に合致するような場合には,不同意とする理由の釈明を求めることも許されると考えられています。

■ 争いのない事件で弁護人が書証を不同意にすると印象が悪くなる?

被告人が起訴状記載の公訴事実を認め,争っていない事件(以下「争いのない事件」といいます。)において,弁護人が書証を不同意にした場合,裁判所は,「被告人が反省していない」という印象を持つのでしょうか。

そこで,争いのない事件で,弁護人が書証を含む証拠の全部について同意した場合の審理について,次いで,弁護人が一部の書証を不同意にした場合の審理について,それぞれ,標題について考えてみることにします。

なお,刑事訴訟法(以下,単に「法」といいます。)326条1項では,証拠に対する同意・不同意権は検察官と被告人の専権となっていますが,実務では弁護人が包括代理権に基づき証拠に対する意見を述べていますので,以下ではその扱いに従うことにします。

■ 弁護人が証拠の全部について同意した場合の審理について

争いのない事件でも,同意された証拠の取調べに入る前に,被告人に対し,

「これから検察官が書証の内容の要旨を告げるので,よく聞いていてください。後でその内容について尋ねますから。」
と言った上,書証の要旨の告知後,
「書証の内容の要旨を聞いていて,何か言いたいことはないですか。」
と聞いたりします。

それに対し,被告人が,「誰々の言っていることは,ここが違う。」とか述べ,その者の供述内容と余り食い違いがある場合には,「その人に聞いてみたいことはありませんか。」と更に質問したりしますと,被告人が「どうしても聞きたいことがある。証人尋問してほしい。」ということがないわけではありません。
また,「証人として呼んでも,本当のことは話してくれないと思う。自分の言い分をよく聞いてほしい。」ということもあります。

このような場合,事案にもよりますが,証人尋問をした方がベターな場合には,検察官ないし弁護人にその旨を促し,まず被告人の言い分を聞いてから証人の必要性を判断しようとする場合は,被告人質問を先行して行うこともあります。

裁判の審理を中心に考えた場合,被害者やその遺族のことを考慮するとしても,その主体は被告人というべきですから,裁判所は,証拠に対する同意・不同意の意見に左右されることなく,適正な事実認定と公正・妥当な量刑を志向していると考えるべきです。

■ 弁護人が一部の書証を不同意にした場合の審理について

争いのない事件においては,当事者の関心事はもっぱら量刑ということになります。

しかし,争いのない事件であっても,犯行に至る経緯,犯行の動機,犯行後の状況,公訴事実との関連性,情状に関する事実等に関しては,検察官と被告人・弁護人との間で,その事実の存否や評価を巡って,争いがあるのがむしろ一般的といえます。
裁判所も,上記の認識に立って,審理に臨んでいるわけですから,争いのない事件であっても,不同意とする理由の釈明を要するか否かはともかく,弁護人が一部の書証を不同意にしたからといって,「被告人が反省していない」という印象を持つとは考えられないし,持つべきではないといえましょう。

ただ,嫌がらせの意味で証人喚問を目論んで不同意にしたのであれば,「被告人が反省していない」という量刑評価を受けるのは,被告人自身が甘受しなければならないでしょう。


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