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刑事裁判で証拠意見の同意を撤回することはできる?

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裁判所は,証拠調べの請求がありますと,請求した当事者の相手方又はその弁護人の意見を聴いて,証拠決定(規則190条1項)を行います。
この証拠調べに関する意見を証拠意見といいます。

証拠決定には,職権による場合(法298条2項)もありますが,実務上,職権による証拠調べの実例は少ないようですので,以下においては,当事者からの証拠調べ請求を前提とすることとします。

ところで,書証については,証拠とすることに同意する旨の意見(法326条1項)を,証拠意見の形で述べるのが一般的です。
また,同意の効果については,実務上,積極的に証拠能力を付与する訴訟行為であると解されています。

では,当事者が同意という証拠意見を述べた後,その同意の意見を撤回することは認められるのでしょうか。

同意の撤回を安易に認めますと,その同意を前提として進められてきた訴訟手続の安定性が害されるおそれがあります。
そこで,同意の撤回は認められるのか,仮に認められるとした場合,証拠の採用決定前,あるいは証拠の取調べ施行前というように,時期的な制約があるのでしょうか。
さらに,公判前整理手続に付された事件とそうではない通常の事件によっても,違いがあるのでしょうか。
以下においては,公判前整理手続に付された事件とそうではない通常の事件に分けて検討することとします。

公判前整理手続に付された事件の場合

公判前整理手続が進行中であれば,争点及び証拠の整理をしている段階ですから,同意の撤回は認められると解されます。
しかし,公判前整理手続が終了した場合であれば,同意の撤回が認められるのは,公判前整理手続を行う趣旨等に照らして,一般的に,法316条の32第1項にいう「やむを得ない事由」と同様の事由が認められる場合に限られると解されています。
そして,同意の撤回に関しての「やむを得ない事由」としては,例えば,供述者が所在不明で,その供述調書について同意したところ,その供述者の所在が判明して,証人尋問が可能となった場合等が想定されます。

公判前整理手続に付されていない通常の事件の場合

①証拠の採用決定前の段階

証拠の採用決定前であれば,同意という訴訟行為による効果が生じていませんので,証拠意見の変更ということで,同意の撤回は認められると解されています。

➁証拠の採用決定後で,証拠の取調べ施行前の段階

裁判所は,証拠の取調べを行う前ですので,相手方の意見を聴くとはいえ,一般的には,同意の撤回を認めていると思われます。
手続的には,証拠の採用決定を取り消すことになります。
しかし他方で,その同意を前提として進められてきた訴訟手続の安定性が害される場合には,相手方が撤回に異議がなければともかく,相手方に異議がある限り,同意の撤回が認められるためには,撤回の必要性を裏付ける特別の合理的理由があることを要するとした上,裁判所が裁量によって許可した場合に限られるとする見解もあります。
裁判体の考え方によって,違いが出てくるといえるでしょう。

③証拠の取調べ施行後の段階

裁判所は,その書証の証拠調べをすることにより,既に一定の心証を形成し終えていますから,同意の撤回は認められないと解されます。


以上のように,証拠の取調べ施行後は,証拠意見としての同意の撤回は認められませんが,証拠の取調べ施行前については,訴訟手続の内容によって,違いが出てくるといえましょう。


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