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新たな通信傍受法と警察の運用とは?

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通信傍受法は否定的に捉えて『盗聴法』とも呼ばれる法律です。
プライバシーの深淵とも言える通話を警察が傍受することについての議論が盛んですが,今回は問題視されている新たな通信傍受法について触れてみましょう。

 通信傍受法ってなに?

通信傍受法は,正しくは『犯罪捜査のための通信傍受に関する法律』といいます。
平成11年に制定された組織的犯罪への対策立法のひとつです。
それまでは検証許可状の発付を受けて通信会社の機器に対する『検証』を行うことで通信傍受を行うという変化球で対応していました。(現在でも携帯電話の位置探索はこの『検証』で対応しています。)
これに法的根拠を与えたのが通信傍受法です。

前述のとおり,組織的犯罪に対応するために立法されたものなので,対象犯罪は銃器薬物犯罪などの組織的犯罪に限られ,しかも通信傍受以外の方法で証拠が得られない場合に限られていました。
ところが本年の改正案では,対象犯罪が拡大されて,新たに窃盗,詐欺,殺人,傷害,放火,誘拐,監禁,爆発物,児童ポルノなどが加えられることになりました。
しかも,通信傍受の方法が大幅に簡易化されることになりました。
取調べの可視化が進み,犯罪の核心にあたる部分の証拠を得るための取調べが強い制限を受ける中,警察は新たな捜査手法を得たと言えるでしょう。

反面,警察による通信傍受の乱用が懸念されています。
「通信の秘密を強く侵害する行為」として多くの反対活動が展開されましたが,改正案が可決されました。
今後,警察には,通信傍受の適正な運用が強く求められることになりそうです。

通信傍受の方法は?

通信傍受は,裁判所が発付する『通信傍受令状』により執行できます。
以前は,通信会社に捜査員が令状を持参し,通信会社の立会人による立会のもとで,原則10日間,最長30日間の傍受が可能でした。
「通信会社に」といいますが,実は通信傍受に対応できるのは通信会社の限られた施設のみ。
つまり,全国各地の警察は,通信傍受を行う際にわざわざ首都圏まで出張して通信傍受をしていました。

今回の改正により,通信傍受の方法は大幅に簡易化されました。

まず,捜査員は首都圏にある通信会社の施設に赴く必要がありません。
通信会社が対象の通話内容を暗号化したデータに変換して警察施設に伝送し,警察が復号化して内容を傍受するという方法になったのです。
これにより,通信会社の施設で立会人による立会いのもと行われていた通信傍受が,立会人なしで警察施設で行われることになりました。
この点についても,立会人なしの通信傍受になったことで警察による無用な傍受が懸念されていますが,あくまでも通信会社側が伝送するデータによる傍受であり,不要な会話(事件に関係ない私的な会話など)は傍受の対象にならず,しかも,警察が会話のどの部分を傍受したのかは通信会社側が把握することができます。

「必要だから全部聞きましたって言えばそれまでだろう?」という反対意見もあります。

しかし,必要のない部分を傍受して人権問題になり事件自体をご破算にしてしまうほど警察にとってバカバカしいことはありません。
裁判所が警察の言いなりになって令状を乱発するのでは?という意見もあります。
令状請求に対する発付率は100%に近いですが,これは令状請求に対する警察内のチェック機能が完成されており,発付できない内容であれば警察は無理に請求を続けず撤回するからであって,裁判所が警察の言いなりになっているわけではありません。

通信傍受の具体的な成果はあるの?

実は,これまでの通信傍受はほとんどが具体的な成果をあげていませんでした。
法施行から数年は年間数件の検挙のみでしたが,近年になってやっと対象事件で年間100人に近く検挙されるようになりました。

組織的な銃器薬物犯罪などが対象といっても,実際に組織的犯罪の捜査をするからといって通信傍受が土俵にあがることはほとんどありませんでした。
現職警察官で通信傍受の捜査に携わった経験がある捜査員は,全体のうち,つま先程度の数しかいないのが現実です。
あまりにレアケースな捜査手法であるがために通信傍受が定着しておらず,警察庁が年に全国で数件の事件を選定して通信傍受を浸透させる試験的運用を繰り返してきました。

例えるなら,インターハイや国体のように各都道府県を持ち回りで実施していたのです。
これまでの運用で実効があったか?と考えると,おそらく高いハードルを超えた捜査である割には効果がなかったと言わざるを得ません。
一部の通信傍受に慣れた大都市圏の警察以外は,全て「こうやってやるんだぞ」と教養的に実施していたようなものですから仕方ありません。

今後は対象事件が拡大され,組織犯罪対策部以外で運用されるようになるわけですから,特に誘拐事件や振込め詐欺事件の捜査には絶大な効果が期待されるでしょう。

 

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