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刑事事件

裁判所の側から見た通信傍受の手続の解説<3>

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傍受令状の発付,再発付又は却下について

① 発付

傍受令状には,上記5の③の⑴ないし⑺6)7)8)9)に加えて,傍受の実施10)に関する条件11),有効期間及びその期間経過後は傍受の処分に着手することができず傍受令状はこれを返還しなければならない旨,発付の年月日,有効期間内であっても,その理由又は必要がなくなったときは,直ちにこれを返還しなければならない旨を記載しなければなりません(法6条,通信傍受規則5条)。

② 再発付

裁判官は,請求された傍受令状の被疑事実に前に発付された傍受令状の被疑事実と同一のものが含まれるときは,同一の通信手段については,更に傍受をすることを必要とする特別の事情があると認めるときに限り,傍受令状を発付することができます(法8条)。

③ 請求の却下

傍受令状発付の要件が認められない場合には,裁判官は,その請求を却下しなければなりません。
却下するには,請求書にその旨を記載し,裁判官が記名押印して,これを請求者に交付すれば足ります(通信傍受規則18条,刑事訴訟規則140条)。

傍受の実施

① 令状の提示等

⑴ 傍受令状は,通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者(会社その他の法人又は団体にあっては,その役職員)又はこれに代わるべき者に示さなければなりません。
ただし,被疑事実の要旨については,これを示す必要がありません(法9条1項)。
⑵ 傍受の実施については,電気通信設備に傍受のための機器を接続することその他の必要な処分12)をすることができ,検察官又は司法警察員(以下「捜査機関」といいます。)は,検察事務官又は司法警察職員にその処分をさせることができます(法10条)。
⑶ 捜査機関は,通信事業者等に対して,傍受の実施に関し,傍受のための機器の接続その他の必要な協力を求めることができ,通信事業者等は,正当な理由がないのに,これを拒んではならないこととされています(法11条)。
⑷ 傍受実施の際は,上記の通信手段を管理する者又はこれに代わるべき者(これらの者を立ち会わせることができないときは,地方公共団体の職員)を立ち会わせなければなりません。
立会人は,捜査機関に対し,当該傍受の実施に関し意見を述べることができます(法12条)。

② 該当性判断のための傍受

捜査機関は,傍受の実施中に行われた通信であって,傍受令状に特定記載された傍受すべき通信に該当するかどうかが明らかでないものについては,傍受すべき通信に該当するどうかを判断するため,これに必要な最小限度の範囲に限り,当該通信を傍受することができます(法13条1項)。

③ 他犯罪の傍受

捜査機関は,傍受の実施中に,傍受令状に被疑事実として記載されている犯罪以外の犯罪であって,別表犯罪又は死刑,無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たるものを実行したこと,実行していること又は実行することを内容とするものと明らかに認められる通信が行われたときは,当該通信を傍受することができます(法14条)。

通信傍受の記録等

① 傍受の原記録,傍受記録

傍受した通信は,すべて,録音その他の適切な方法により記録媒体に記録され,立会人が封印した上,傍受令状を発付した裁判官が所属する裁判所の裁判官に提出され,傍受の原記録(法22条4項)として保管されます(法19条1項,20条1項3項。保管期間につき法27条)。
捜査機関は,傍受した通信の内容を刑事手続で使用するため,傍受の原記録の複製から犯罪と無関係な通信の記録を消去した記録(「傍受記録」といいます。)を作成しなければなりません(法22条)。

② 通信当事者に対する通知

捜査機関は,傍受記録に記録されている通信の当事者に対し,傍受記録を作成した旨及び通信を傍受したこと等を通知しなければなりません(法23条1項)。
その通知は,傍受終了後30日以内にしなければなりませんが,裁判官は,捜査が妨げられるおそれがあるときは,捜査機関の請求により,60日以内の期間を定めて延長することができます(同条2項,通信傍受規則14条)。

③ 傍受実施状況報告書の提出と事後審査

捜査機関は,傍受の実施終了後,遅滞なく,その実施状況を記載した書面(傍受実施状況報告書)を,傍受令状を発付した裁判官が所属する裁判所の裁判官に提出しなければなりません(法21条1項前段)。
傍受期間延長の請求時にも,この提出が必要で(同項後段),延長許否の判断の資料となります。
他犯罪の傍受に関する傍受実施状況報告書が提出された場合には,裁判官は,記載された当該通信が法14条に規定する通信に該当するかどうかを事後審査し,該当しないと認めるときは,当該通信の傍受の処分を取り消すものとされています(法21条1項6号,2項)。

不服申立て

裁判官がした通信の傍受に関する裁判や,捜査機関がした通信の傍受に関する処分に対しては,不服を申し立てることができます(法26条)13)


 

6) 「傍受令状請求の手続」の③の⑵被疑事実の要旨,罪名及び罰条については,通常の捜索差押許可状や検証許可状とは異なり,傍受令状では,罪名に加えて被疑事実の要旨と罰条が必要的記載事項とされています。これは,犯罪関連通信を令状においてできる限り特定するためです。

7) 「傍受令状請求の手続」の③の⑶傍受すべき通信については,傍受することができる通信とそれ以外の通信とを識別できるよう,できる限り具体的に特定する必要があります。

8) 「傍受令状請求の手続」の③の⑷傍受の実施の対象とすべき通信手段については,例えば,「・・所在の○○マンションに設置された□□―□□□□―□□□□の電話番号の電話」,「プロバイダーX社のpopサーバ中のメールアドレス●●●●のメールボックスに入る電子メール」のように,電話番号,電子メールのアドレス等により特定して記載します。

9) 「傍受令状請求の手続」の③の⑹傍受ができる期間については,令状発付時に10日以内の期間が定められます(法5条1項)。
この期間は,10日以内の期間を定めて延長することができ,通じて30日を超えることができません(法7条1項)。

10) 「傍受の実施」とは,「通信の傍受をすること及び通信手段について直ちに傍受をすることができる状態で通信の状況を監視することをいう。」と定義されています(法5条2項)。
例えば,電話であれば,交換機のところで,対象とする特定の回線に傍受に必要な機器を接続し,発信あるいは着信があったら直ちに傍受することができる状態で,通話が行われるか否かを見守ることを意味します。

11) 傍受の実施に関する条件としては,傍受を実施できる時間帯を制限することが考えられます。
なお,立会人に通信を傍受させて一定の場合にこれを切断することを認めるような条件を付することはできないと解されています。そもそも,立会人には傍受している通信の内容を確認する権限はないというのが理由です。

12) 必要な処分の例としては,通信事業者等の管理する電気通信設備の操作や無関係な者の傍受実施場所への立入り防止等の措置が考えられます。

13) これらの不服申立ての手続は,準抗告の例によります(法26条7項,刑事訴訟法429条1項,430条1項)。

 


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