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<保釈請求>「罪証隠滅のおそれ」の要素について検討する

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刑事訴訟法(以下、単に「法」といいます。)89条4号の罪証隠滅のおそれについては、一般的に、罪証隠滅の対象、罪証隠滅の態様、罪証隠滅の余地(客観的可能性及び実効性)、罪証隠滅の主観的可能性の各要素に分けて考察すべきものとされています。
そこで、まず、それぞれの各要素について検討することとします。

罪証隠滅の対象

罪証隠滅の対象には、犯罪の特別構成要件に該当する事実、違法性又は責任阻却事由に関する事実、刑の減免に関する事実、犯情を基礎付ける事実、刑の量定に影響を及ぼす情状に関する重要な事実が含まれると解されています(実務)。
犯情を基礎付ける事実としては、殺人罪等における動機・犯行に至る経緯・殺害の態様等、被害者と被告人の関係、誘因、動機、凶器の入手経路、共犯事件における共謀の成立過程とその具体的内容・役割分担・犯行後の利益分配等、いわゆる集団事件における共謀に至る具体的事情・計画性の有無・集団の組織や構成・集団における被告人の地位・役割等、薬物事犯(所持、譲受、譲渡、使用)における入手経路・入手状況・処分先、密売組織との関係、常習性・営利性等が、刑の量定に影響を及ぼす情状に関する重要な事実としては、酒酔い運転における飲酒の状況・飲酒量、無免許運転における運転の常習性に関する事実等が考えられます。

罪証隠滅の態様

罪証隠滅の態様は、証拠に不当な影響を及ぼす一切の行為をいいます。
既存の証拠を隠滅・毀滅する場合と虚偽の反対証拠を作出する場合があります。
前者の例としては、帳簿等の証拠書類や証拠物を毀棄・隠匿あるいは改ざんすることが考えられ、後者の例としては、捜査官に対して供述している者に働きかけ真実の供述を変更させること、捜査機関が取調べをしていない事件関係者に働きかけ自己に有利な虚偽の供述をさせることのほか、共犯者と通謀したり、事件関係者・参考人と通謀したり、又は事件関係者・参考人に対し圧迫を加えるなどして、自己に有利な虚偽の供述をさせることなどが考えられます。

罪証隠滅の余地(客観的可能性及び実効性)

罪証隠滅の余地は、具体的な証拠に対する隠滅行為が客観的に可能であることと、それと同時に、そのような証拠隠滅行為がなされた場合に罪証隠滅の効果が生じ得るものであることが前提となりますので、その点の検討が必要となります。
罪証隠滅の客観的可能性については、事案の性質及び態様、公判審理の状況から見て、立証済みの証拠、そして今後立証が予想される証拠に対する隠滅行為が客観的に可能かどうかが重要な要素となります。被告人が罪証隠滅行為をしようとしても、客観的にその余地がないか乏しい場合には、罪証隠滅のおそれがあるとはいえません。
捜査機関に押収された証拠物を毀棄・隠匿することは事実上不可能ですし、また、事件関係者が警察官とか被告人と敵対関係にある者の場合は、それらの者への働きかけあるいはその実効性は低いと考えられるからです。
他方、事件関係者や目撃者が被告人の友人、家族、同一組織に属する者等である場合はその逆ということになります。
罪証隠滅の余地については、
●公訴事実の内容から当該事案には客観的にどのような証拠がどの程度あり得るか
●現在そのうちどのような証拠がどの程度取り調べられ、更に今後どのような証拠をどの程度取り調べる必要があるか
●公判の審理がどの程度進展しているか
●供述証拠については、それらの証拠と被告人との関係はどうか
●被告人の供述態度はどうか
などの事情を考慮して、具体的事案ごとに判断されます。
共犯者等関係人が勾留等により身柄拘束を受けている場合でも、その拘束がいつ解かれるか分からないことから、身柄不拘束の状態にあるものとして、一般的には判断されています。

罪証隠滅の主観的可能性

被告人に罪証隠滅行為を行う意思があることが必要です。
被告人が捜査段階から罪証隠滅工作を画策してきたというような事実がある場合には、この主観的意思を認めることが比較的容易であり、また、実際上は、客観的に罪証隠滅の余地が大きく、また罪証隠滅行為が容易に行い得る状況にあるときも、この主観的意思を認める方向に働くと考えられます。
被告人が自白していても、それだけで罪証隠滅の意思がないことにはなりません。
処罰される危険性が罪証隠滅行為を行う動機となり得ることを考えますと、具体的に処罰されることによって受ける不利益の程度も考慮すべきこととなります。
被告人に罪証隠滅を行う意思がない場合には、罪証隠滅のおそれがあるとはいえません。
そのような被告人の主観的意思を知る手掛かりとして重要なのは供述態度です。
当初から一貫して詳細な自白をし、反省の情を示しているということは、罪証隠滅の意思を打ち消す方向に働くのに対し、虚偽の弁解を繰り返したり、供述を転々と変えるという場合は、罪証隠滅の意思が推認されるといえます。


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