一人で法律事務所を経営する弁護士のためのサポートサイト

Lawyer's Helper

刑事 刑事事件

<保釈請求>犯罪類型毎の保釈の運用-覚せい剤所持-

投稿日:


覚せい剤所持事件の保釈の運用を検討します。

覚せい剤の単純所持と営利目的所持の違い

覚せい剤の所持については、覚せい剤取締法41条1項に規定されています。覚せい剤を営利目的なく所持した場合が単純所持罪で、営利目的をもって所持した場合が営利目的所持罪に該当します。

罰条としては、前者が同法41条の2第1項(10年以下の懲役)、後者が同法41条2第2項、1項(1年以上の有期懲役、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金)となります。

営利目的の認定

営利目的とは、犯人が自ら財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合をいうと解されています(判例)。

では、具体的に、営利目的は、どのような点が考慮されて認定されるのでしょうか。

被告人の信用できる自白がある場合には、有力な証拠ということになります。
取引に関する譲受人の供述や捜査官の目撃供述がある場合もあります。
一般的には、
⑴覚せい剤の量(量だけで営利性が決まるわけではありませんが、通常は、末端の使用者が個人で使い切るには多すぎる量というのが目安になります。)
⑵小分けの状況(ほぼ均等の分量に小分けされた状況と数、包装の状態)
⑶小分け道具(ビニール袋、鋏、割り箸、ライター、秤、ピンセット、スプーン)
⑷携帯電話(連絡用)
⑸取引メモ・手帳(仕入れ、売り捌き、顧客に対する取引状況)
⑹預金口座の内容
⑺密売により得られたと思われる現金
⑻サービス用の注射器
⑼保有車両の番号(車両の窓越しに取引がされる場合)

等を総合的に判断して、営利目的か否かを認定することになります。

権利保釈あるいは裁量保釈の該当性

⑴ 営利目的所持の場合

法89条1号に該当するため、権利保釈は認められません。
そして、通常、犯罪の罪質、態様、秘密裡に犯される特殊性や量刑の厳罰化から、罪証隠滅のおそれも肯定できると考えられています。
また、覚せい剤の営利目的所持罪では情状により罰金刑が併科されますが、その趣旨は、犯人が現実に金銭的利得を得ているか否かにかかわらず、財産刑を併科することによって当該犯罪が経済的に引き合わないことを強く感銘させることにあると解されています。

さらに、営利目的所持であると認定された場合には、ほぼ例外なく、有期懲役と罰金が併科されています。
そのような現状から、他に主犯がいて、当該被告人が従属的な立場にすぎず、しかも、主婦で、乳飲み子を抱えているなどの酌むべき特別の事情があればともかく、一般的には、裁量保釈も認められないと考えられています。

営利目的を有する者は、覚せい剤を社会に蔓延させることによって利益を得ようとしているわけですから、一般予防の見地からも厳しい処罰をもって臨む必要があるというのが、その理由ということになります。

⑵ 単純所持の場合

権利保釈が認められるか否かは、同種前科があるかどうかが、重要な判断要素になります。

同種前科があれば、法89条3号の「常習として犯したこと」に該当するため、権利保釈は認められません。
覚せい剤の単純所持は、自己使用のための所持ということになりますが、覚せい剤そのものは禁制品であって、一般人が容易に入手できる物ではなく、自己使用目的の所持であっても、覚せい剤に対する親和性・常習性が強く推認されることになります。

ただ、同種前科があっても、前回の裁判から数年が経過しているとか、又は同種前科がないということであれば、法89条3号に該当するとしても、その常習性の程度は未だ強固とまではいえず、被告人の経歴、家族関係、前科の程度から保釈保証金によって逃亡の防止が可能と見込まれる場合には、裁量保釈を相当とする特別の事情がある場合も出てきます。

もちろん、証拠上からも、被告人に同種犯罪を反覆する習性があるとは認められない、すなわち、常習性が否定される場合もあります。さらに、罪証隠滅のおそれについては、覚せい剤そのものが押収されているわけですから、一般的には、罪証隠滅のおそれはないものと考えてよいと思われます。

覚せい剤の単純所持の量刑は、同種・他種を問わず、累犯前科があれば別ですが、覚せい剤の量と同種前科の有無でほぼ決まるといえます。

したがって、他の事情を考慮する余地が極めて少ないため、具体的、実質的に考えても、覚せい剤が押収されていれば、罪証隠滅のおそれがあるとはいえないからです。

被告人が覚せい剤の入手先を秘匿している場合はどう考えるべきでしょうか。

社会復帰後に報復されることを恐れて、入手先を秘匿する場合もあります、他方で、社会復帰後に再び入手するために秘匿する事例もあります。
しかし、再犯の防止は勾留の目的ではありませんから、再犯のおそれは権利保釈の除外事由とはされていません。
結局、入手先の秘匿を理由に、罪証隠滅のおそれがあるとすることはできないことになります。

 


adスマホ用

adスマホ用

-刑事, 刑事事件

Copyright© Lawyer's Helper , 2017 AllRights Reserved Powered by AFFINGER4.