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定額残業代制のメリットとデメリットとは?

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残業代というと、通常は労働者の残業時間に応じて支払うものというイメージを持たれるでしょうが、金額を固定して定額残業代を支払っているという事業者も見受けられます。

この定額残業代はどういうものなのでしょうか。
またどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

定額残業代とは?

例えば月に10時間は残業が発生すると見込んで、10時間分の残業代を固定給に組み込んで支給するとします。
この残業代が定額残業代と言われます。

割増賃金として定めている残業代は、残業時間月60時間以内の残業代は通常の労働時間で計算した賃金の25%以上、60時間を超えた分は50%以上で計算するとされております(労働基準法第37条)。
この定めは時間外労働及び深夜労働に関するもので、休日労働や深夜業務などでは、企業規模などにも応じて別途決められております。

これを参考にして、例えば基本給20万円(所定労働時間週40時間)、月10時間分の定額残業代2万円で給与22万円とすることが考えられます。

定額残業代の要件とは?

定額残業代は、実は労働法規に明確な要件はありませんが、過去の裁判例(関西ソニー販売事件 大阪地裁昭63.10.26)で有効とされております。
そして、このようにすれば定額残業代として認められやすくなるというのが、法律家の間で共有されているのです。
最近では、テックジャパン事件(最高裁 平24.3.8)における櫻井裁判官の補足意見に基づく判決が多数出ており、ここから導かれる要件が参考になっています。

  • 雇用契約書、就業規則、給与明細などに明示され、労働者の合意を得ている。
  • 見込み残業時間が定められている。
  • 定額残業代が、実際の残業時間に基づいて計算した割増賃金を下回る場合、差額支給する。

1点目と2点目は、定額残業代であることや、見込み残業時間を書類で明示すべきで、労働者の同意も得るべきということです。
一部定額残業代のつもりで基本給や手当を支給していた、見込み残業時間を設定しないなどは無効とみなされる可能性が高いです。

最後の要件は定額残業代を設定していたとしても、最終的には法律に基づいて計算した割増賃金をしっかり払うべきということです。
賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)を守る必要があります。

また、最低賃金との絡みで言うと、下記の要件にも気をつける必要があります。

  • 給与のうち定額残業代を除いても、最低賃金を下回らない。(最低賃金法第4条第3項)

定額残業代込で最低賃金を上回るような給与体系にしたら、問題になるということです。

定額残業代を導入するメリット

まずは、賃金固定化により給与計算の事務処理が省けるということが言えます。
社会保険料、雇用保険料、源泉所得税、住民税を差し引いて給与が支払われます。
住民税は自治体からの通知で決まりますが、その他の項目は給与額によります。社会保険料は給与に一定額以上の変更があると、3カ月後から金額を変更します(健康保険法第43条、厚生年金保険法第23条)。
雇用保険料や源泉所得税はその月の給与額によって変わります(労働保険徴収法第32条、所得税法第185条)。
賃金を固定すれば、社会保険料の料額表や源泉所得税の税額表、雇用保険料率などの変更が無い限りは、保険料や税をその都度計算しなくて済むのです。

また、見込み残業時間に基づき定額で残業代を支払うことで、労働者側に時間外労働を減らそうとする気持ちが働くことが考えられます。
さらに、固定給を基本給と定額残業代に分けることにより、割増賃金の基礎となる基本給も下がり、割増賃金を差額精算することになったとしても、残業代を低減できることが考えられます。

定額残業代を導入するデメリット

「定額残業代の要件」に基づき、実際の残業時間が見込み残業時間と同じだった場合に差額精算にならないように、定額残業代を高く設定しておいたほうが面倒なことにはならないでしょう。

しかし実際の残業時間が見込み残業時間を下回っていたとしても、同じ額を支払うことになります。
一度決めた以上は、賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)を守ってくださいということです。

その他定額残業代は、労働者から異議があると、労基署に是正勧告を受けたり、裁判で無効と判断されたりするケースが結構あります。
何時間残業しても、残業代を支払わなくて良くするための方策として、事業者に利用されているケースが見受けられますが、定額残業代に関する要件は最低限満たさないと無効になる可能性が高いのです。

労働者側からのクレームにならないよう、定額残業代を設定したほうがいいと言えるでしょう。


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