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定額残業代が不当と言われた場合に求められる対応は?

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定額残業代に関しては、企業側が都合よく利用し、残業に応じた手当が労働者に支払われないばかりか、長時間労働を前提とし従業員の健康に悪影響を及ぼすことから、特に裁判において厳しい見方がされるようになりました。39807d4127b678b3c8cb398660ab755f_s

どのようなケースが無効となり、気をつけたほうがいいことは何なのでしょうか。

定額残業代が無効と判断されたケースの具体例

こちらは、裁判例をもとに見て行きましょう。
ハンナシステム事件(大阪地裁 平26.10.16)は、企業側での定額残業代の設計が不十分だった典型例です。
基本給の中に月20時間分の定額残業代42,000円が含まれると企業側は主張しましたが、給与明細などの書類で明示しておらず無効と判断されました。

櫻井裁判官が補足意見を出したテックジャパン事件(最高裁 平24.3.8)では、基本給41万円として、月労働時間が180時間超で時間外手当を支払い、以内であれば支払わない(20時間分の定額残業代が含まれている)という雇用契約が問題になりました。基本給に含まれるとされている残業代が明確に判別できないということから、無効と判断されました。

アクティリンク事件(東京地裁 平24.8.28)では、営業手当が見込み残業時間を30時間分の残業代相当であると賃金規程で定めていましたが、趣旨が異なることや、30時間を超えた場合の差額精算は行っていないことが問題となり、無効と判断されました。

ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高裁 平24.10.19)は、長時間労働の問題とも関連する裁判例です。
基本給224,800円、職務手当154,400円という形の労働契約を労働者と締結しました。この裁判では、月95時間分の定額残業代というのが企業側の主張でした。
これでは95時間もの残業を想定していると解釈されるため安全配慮義務違反とされることから、(36協定で認められる範囲内の)月45時間相当が妥当であり、45時間を超える範囲では割増賃金を払うべきと判断されました。

このケースからは、月45時間超という長時間残業で定額残業代を設定するリスクが浮き彫りになりました。
また職務手当であるが定額残業代とはみなされている点がアクティリンク事件と異なっており、差額精算はされていないものの月45時間相当の定額残業代とは認められています。
差額精算に関しては、労基法上の趣旨からすればすべきなのですが、精算しないと必ず無効になるとは言えない点でグレーなところでもあります。

定額残業代が無効となった場合のリスクとは?

定額残業代が無効となれば、その分を割増賃金の計算基礎とした上で、割増賃金を、未払賃金として別途支払うことになります。
未払賃金を請求される裁判では、付加金・遅延損害金を請求されることがありますので、気をつける必要があります。

付加金とは、割増賃金の不払いに対する制裁としての性格を持つもので、割増賃金と同額の請求ができるとされております(労働基準法第114条)。
なお、裁判の訴訟においてのみ、違反のあったときから2年以内に請求できます。また判決により認められるかは、個々の事例によります。

また、本来支払われる日の翌日から、遅延している期間の利息(年利6%)相当額を遅延損害金として支払うことがあります(商法第514条)。
労働者の退職後に裁判をおこされているような場合は、退職以降の最終支払日から起算して利率は年利14.6%に跳ね上がります(賃確法第6条第1項、賃確法施行令第1条)。

これらの利息負担はかなり大きい上に、付加金があればその分も含めて元金とし利息計算します。

定額残業代が無効と言われないようにする対策は?

一応は認められている定額残業代も、テックジャパン事件の最高裁判決を機に、かなり厳しくなってきたとされています。

大前提として、残業時間数に基づいた残業代を支払わず、人件費を圧縮するという安易な考え方での導入は避けるべきと言えます。
定額残業代である旨と、見込みの残業時間数と金額を「書面によって」「明示」した上で、労働者の「同意を得る」必要があります。

また、人件費を圧縮したい場合でも、基本給は「最低賃金以上」としてください。ここまで綿密な準備が無いと、有効と判断されるのは厳しくなるでしょう。

実際の残業時間と照らして、労働基準法に基づいて計算した割増賃金未満であれば差額精算し、見込み残業時間が月45時間を超えないように気をつける必要もあるでしょう。

これは定額残業代を導入したとしても、労働時間の管理を怠るべきではないということになります。
結局は、従業員の健康を損なわないよう、業務の量を調整し、長時間労働を削減する義務があるということです。


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