一人で法律事務所を経営する弁護士のためのサポートサイト

Lawyer's Helper

刑事事件 法律・法律事務

<保釈請求>犯罪類型毎の保釈の運用-横領-

投稿日:


横領の態様・内容には様々なものがあります。

そして、条文上も、単純横領、業務上横領、遺失物横領(占有離脱物横領)に分かれています。
しかも、委託信任関係を前提とする単純横領及び業務上横領と、委託信任関係を前提としない遺失物横領との間には、犯罪の態様において大きな違いがあり、それは法定刑の差にも表れています。

ちなみに、単純横領罪は5年以下の懲役、業務上横領罪は10年以下の懲役、遺失物横領罪は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料となっています。ここでは、単純横領と業務上横領を取り上げることにします。

横領と業務上横領は、いずれも、自己の占有する他人の物を横領した場合に成立するのを基本とします。

したがって、他人の物が自己の占有下にあるわけですから、犯罪を誘発されやすく、誘惑的であって責任が軽いと考えられています。
しかし、そうはいっても、単純横領と業務上横領では、上記のとおり、法定刑の違いからも分かるように、業務者たる身分を有することにより、業務上横領罪は、基本類型の単純横領罪の加重類型となっています。

なお、ここでいう「物」とは財物のことをいい、動産のほか不動産も含まれます。そこで、単純横領、業務上横領の順に、保釈との関係について検討します。

単純横領

単純横領とは、他人から委託された物を占有保管している者が、何らかの方法で処分することにより、成立する犯罪であります。

被告人は、委託者から財物を委託されたわけですから、委託者の占有を侵害する側面がないため、委託者の被告人に対する委託信任関係と財物の内容・価値によって、刑の量定もおおむね決まるといえます。
被告人が、捜査段階から一貫して、事実関係を認めている場合には、第1回公判期日前に、権利保釈が認められます。
また、事実関係を争っている場合は、保釈の許否を決する上で、被告人と委託者との関係が大きな要素を占めます。
被告人の委託者に対する影響力が強い場合は、委託者に対する証人尋問が終了した段階で、権利保釈が認められると考えられます。
これに対し、委託者の被告人に対する影響力が強い場合は、実効性のある罪証隠滅行為に及ぶ現実的具体的な可能性は低いといえますから、第1回公判期日前に、権利保釈が認められると考えられます。

業務上横領

⑴ 被告人が金融機関の担当者、あるいは会社の経理担当者の場合

被告人が、捜査段階から着服横領の事実を認めており、かつ、その事実が証拠によって裏付けられていれば、権利保釈が認められます。
長期間の継続的な犯行の場合は、法89条3号の「常習として犯した」に該当し、権利保釈は認められません。
その場合も、被告人の経歴、家族関係、被害弁償の見通し、前科の有無等から、保釈保証金によって逃亡の防止が可能と見込まれれば、裁量保釈が認められます。
被告人が事実関係を争っていて、証拠の改ざんがなされ、金銭の出し入れが複雑に操作されていて、そのために、事件の発覚が遅れたような場合は、客観的な事実が立証によって明らかにされるまで、罪証隠滅のおそれは高いわけですから、裁量保釈も認められないと考えられています。

⑵ 被告人が契約に基づき支払業務を委託された場合

被告人が、捜査段階から着服横領の事実を認めている場合、長期間の継続的な犯行の場合は、上記⑴と同様になります。
実務上、問題となる事例としては、被告人が委託者から借地人に対する立ち退き交渉を依頼され、委託者から借地人に対し交付すべき立ち退き料を業務上預かり保管中に、着服横領したという場合があります。
このような事例では、被告人が事実関係を争っている場合、委託者の被告人に対する立ち退き交渉依頼の趣旨、経緯、被告人と借地人との間の立ち退き交渉の内容、経緯、立ち退き料の支払状況などが争点になり、相当多数の証人、書証等の取調べが必要で、審理期間も相当長期に及ぶものと認められます。
通常、罪証隠滅のおそれが高いとして、権利保釈は認められません。
しかし、本事例の解明に最も重要な関係者である委託者につき、検察官の主尋問が終了すれば、実効性のある罪証隠滅行為に及ぶ現実的具体的な可能性は高いとはいえないものとして、委託者その他の関係者との接見禁止等の条件を付して、裁量保釈が認められると考えられます。

⑶ 被告人が弁護士の場合

事例としては、破産財団に属する金員横領、依頼者のために預かり保管中の金員の着服横領などがあり、弁護士という職責上、依頼者や社会一般の信頼や期待を裏切ったものとして、その刑事責任は重いと考えられています。
したがって、実刑の比率も必然高くなっています。
しかし、そのことと、保釈の許否は分けて考えられなければなりません。
弁護士が、証拠をねつ造していればともかく、一般的に、権利保釈が認められています。
受任事件に関する弁護士報酬の控除の当否が問題となる場合は、横領額に影響してきますので、当該関係者との接見禁止等の条件を付して、裁量保釈が認められると考えられます。


adスマホ用

adスマホ用

-刑事事件, 法律・法律事務

Copyright© Lawyer's Helper , 2017 AllRights Reserved Powered by AFFINGER4.